SIMI LABのOMSBが、blacksmokerからビート・アルバム『OMBS』をリリースした。これが、これまでOMSBがフリーで発表してきたビート集とは一味違う。DOWNSHOT RIG(田我流×KILLER-BONG)とK-BOMBも参加している。OMSBは着実に進化/深化をつづけている。内容についてはインタヴューのやり取りに譲ろう。さて、OMSBの単独インタヴューで乗りこんだつもりが(本当の話)、先日都市ダブ・シリーズの最新作『BROOKLYN DUB』を発表したばかりのKILLER-BONGが極上の日本酒の一升瓶を片手にデ〜ンと待ち構えていた。よって、急遽、史上初のOMSB×KILLER-BONG対談が実現した。フリー・ミックステープとフィジカルの違い、ラッパーとビートメイカーの両立の葛藤と醍醐味、ダンス・ミュージックと理想の音楽とは? 2時間弱の対談のテーマは多岐におよび、白熱した。楽しみながら読んでほしい。



----- 今までのビート制作と今回のアルバムの制作で変化した部分はある?

O OMSB(以下、O):インストで楽しめるように作ったっていうとこぐらいですかね。「インスト・アルバムかよ!?」ってなる人が多いと思うし。実際にリリースするって情報が流れた時に、「あ、アルバムじゃないんだ」って感想があったんで、「いいから聴いてよ」っていうようなものを作りました。

KILLER-BONG(以下、K):だいたいさ、最初にさ、ミックスCD作ってくれって言ってたんだ。

O:ふふふ

K:「できた!」って聴いたら、インストだったんだ。

O:いや、迷ったんすよ。どういうミックスをやろうかと思った時に、全然思いつかなくて。好きな曲があり過ぎて。それをただミックスしてもたぶんつまんないと思って。じゃあ自分のビートが一番いいやと思って。

K:二週間ぐらいしたら、もうビートがさ十何曲ぐらいあったんじゃないの?

O:そうっすね。まぁそっから削ったりはしたんですけど。

K:そういう経緯もちゃんと踏まえといてよ。そういう狂った男なんだ。そういう狂い過ぎな男なんだっ。ゴルゴ13に殺しを依頼したらさ、勝手に知らないやつが殺されたんだ。

O:ははは。


----- 今年の6月に『FAKE HOMIEZ BEAT TAPE』をバンドキャンプで配信して、去年の9月に『Kitajima 36 SubLaw Act.2 〜サブロウチャンス〜』を配信してるでしょ。後者はボツ・ビートということだったけど、バンドキャンプで配信したり、無料配信する作品とフィジカル・リリースする作品ってどう差別化してる? 違いはある?

O:それは、KBが言ってくれたように、ミックスとしてインストを持って行った時に、「あ、これだったら、普通にインスト・アルバムとして出しちゃおうよ」ってJUBEさんに言ってもらえて。その流れで、要は、フリーのものとは違うような感覚にもっとしなきゃいけないな、と思った。

K:そうだね。二週間ぐらいで持って来たけど、そこから微妙な変化っていうのかな、ごく微妙な変化だけどね、少しだけ変わってるね。四段階ぐらい、このアルバムは変わってる。


----- それは細かく言うと、音質とか?

K:音質もそうだし、鳴りもそうだし。その時代の鳴りっていうものがあるし、もしくは、古い鳴りがある。それが両方入ってるし、ドラムの処理の仕方とか音の鳴らし方は最新で、それに古さを乗せていくみたいなね。

O:単純に、フリーで出してたものはボツだったんで。絶対誰も使わないだろうし、オレも使わねぇし、みたいな。良い物を作ってる過程の、自分のインスピレーションの一個一個の出口だっただけで。


----- 『OMBS』には、ワールド・ミュージックの要素がひとつの特徴としてあると思うんですよ。とくにラテン音楽のサンプリングが印象的だった。そこは特別意識した?

K:オレもそう思った。サンプリングのプロセスの段階で、必ず行くのがブラジルっていうことだと思うんだよね。なんかね、それは当たり前のことだと思うよ。

O:そうだね。


----- オムスくんは、そこは意識した?

K:するだろうね。髪型とか。

O:そうっすね。それはしてて、あと、やっぱ、いいなと思うネタがブラジルだった。

K:あと、ビートを組んでみたらわかるけどさ、BPMがさ、すごい難しい。だいたい決まったBPMにブラジルはなるんだ。いろんなジャンルがあるだろうけど、そういうのはもうだいたい統一されてる。ジャンルはBPMなんじゃねぇかなって思うぐらいだよ、オレは。

O:一枚のテーマがわりと旅行気分なんですよ。「どこどこへ行きたい」みたいな。ネタは、たとえばブラジルっちゃブラジルなんですけど、オレのイメージしてる世界観がそこにあったっていうか。


----- モンドっぽいサンプリングをしてる“Costa Del Sol”の曲名は、スペインの地中海の地域の名前でしょ?

O:そうっすね。これはもうそんな感じがしたから。


----- あと、“Digital Cuba”って曲があるけど、サンプリング・ネタはブラジル音楽なんじゃないかと思ったんだけど。

O:それはどーかな? さっき言ったとおり、頭の中でキューバ人がいる市場の情景が浮かんだから、それにしたっていう感じですね。

K:なんかつまらないね、質問が。


----- これからが本番だから。

O:ははははは。

K:ふふふふふ、これはキューバじゃねぇか。自分のリディムがあって、ズレを生じるような感じのさ。


-----まさに。セオリーどおりグルーヴを持続していけば、当たり前のグルーヴになるはずのところを、わざと切ってるじゃない。いつからそういう発想で作ってる?

O:たぶん作り始めた時から、直角なもんがあまり好きじゃなかった。「ドッカ、ドッド、カッ」も悪くないんですけど、やっぱ変わったもんが好きなんすよ。


----- K-BOMBとオムスくんがラップしてる“Str8 Killa”、これはなんて読むの?

O:ストレイト・キラーですね。


----- “Str8 Killa”とか“Exhibit A”とかは、クライム・アクション・ゲームのBGMみたいな、ホラー映画みたいな感じがするよね。

K:そういう雰囲気。架空のさ、モンスターがいて。

O:うんうんうんうん。


----- リリックは何かを攻撃しに行く、倒しに行くみたいな曲じゃない?

O: K:そんなこたーない。これは物語さ。

O:あと一番最後のやつ(“Porn Graf feat.Downshot Rig(田我流×KILLER-BONG)”)。本当はこのアルバムには入れなかった曲をスタジオ入った時に、「これでやろうかなと思ってるんだけど」って聞いて、「あ、それいいかも」って思って、やってもらった感じすね。でも、これ(質問事項の紙)にも書いてあったんですけど、ビートは「未完成の部分と完成の中間にある」みたいな感じはありますね。

K:そういうのあるかもね。こういうトラックは特にね。鳴り的には、SIMI LABのとはまったく逆って言えば逆なんじゃないの?

O:逆ですね。そうっすね。

K:それがヤバいなと思う。それはマイナスの作業って言うかさ。やりすぎないってことだ。やれるからって、やりすぎない。マイナスの作業ができるってことは、もう第二段階ぐらいまで来てるってことだよね、人として。最近だからね、オレがそれを知ったの。

O:ええええええ。

K:だってさ、すごい音とか割れててさ、スピーカーのせいにしてたけどさ、オレがブチ込み過ぎてたんだ。

O:ははははは。

K:マイナスにしたら、ものすごい音が良くなったんだ。


----- でも、オムスくんはまだまだ音をブチ込んでるよね?

O:そうですね。まだ全然ブチ込んでるんで。今作ってるものの方がもっと減らしてるんですけど。まあ、減らせばいいってもんでもないと思いますけど。

K:そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう。

O:未完成っていう部分で、こういうビートにしてもラップする余地を残してて。普通の人はやらないんだけど、誰かがラップするみたいのがオレはいいなあと思ってて。たとえば、JAY-Zがラップのアカペラを用意して、それをみんながリミックスする感じってあるけど、逆にこのアルバム一枚に誰かがラップ乗せて来たらやべーなって思ってますね。

K:トレンドの匂いを感じるね。

O:トレンディですから。


----- トレンディとかポップは意識してるでしょ?

O:うーん、いや、もう雰囲気だけですよね、意識っていうか。こういうとこだけもらっちゃえばいいか、みたいな。

K:オレなんか完全にほしいよ。トレンドな感じはほしいよなぁ。BPMもトレンドがあるんじゃないか? 148〜157、これは今トレンドじゃないか?

O:どーかな?

K:キックにハット、このトレンドもある。


----- ジュークとか?

K:ヒップホップでもトレンドがあるよ。わかりやすく言えば、90年代のネタにハイファイのドラムとベースが入ってる。

O:うんうん。

K:最高なんだよね。ヤバい時代来たよ。そういうふうに使えるんだって言うさ。あの頃のBPMと全然違うから、もう自由度が増してて、ドラムがおもしろかったりすんだ。昔は45回転のプラス8じゃなかったら使えなかったのに、それをそのまま使ってたりとかさ。


----- ああ、なるほどね。

K:“93 'TIL INFINITY”の使い方とかもいろんなやつがいておもしろいよ。オレも昔そういうふうに組んでたけど、誰も歌えなかったもんね。その時代のBPMじゃなかったんだ。







----- “PORN GRAF”のネタはギル・スコット・ヘロン(“Peace Go With You,Brother”)でしょ?

O:どーでしょう??


----- ある意味、大ネタでしょ。

O:わかりません。


----- 『Fake Homiez Beat Tape』の“BLUEZ”でもギル・スコット・ヘロン(“We Beg Your Pardon”)、使ってたよね?

O:どーだったですかねー?

K:オレは使いまくりだよ。

O:気持ちいいんですよね。ギルさん。

K:ねぇ。ローズとかさ。オレもそのうち弾きたいよ。

O:声もいいすもんね。気持ちいい声ですよね。

K:(日本酒の一升瓶を眺めながら)けっこう飲んじゃったな、これ、すごいおいしいね。ほっぺたが赤いもん。あと、最後のやつ。


----- (ギル・スコット・ヘロンの)『I'm New Here』だ。

K:あのさぁ、アルバムのミックス・バランスとかヤバいんだ。なんかさ生ハムな感じがするよね。ウェウウェウウェウェウェウェウェウェー♪

O:ははははは。

K:ふふっ、そうだろ? まぁ、でも、BPMや鳴りのトレンドっていうのをもっとよく知っといた方がいいんじゃないか? 俺はよく知らねーけども。なんかさ歌いやすいのとインストのBPMって違うよね、ちょっとねぇ。

O:全然違いますね。

K:微妙に違うね。実際ブースに入ってみても歌えなかったりする。

O:それはすごいありますね。

K:いろいろな技術があるからね、大人の。やってみたら? そしたらインタヴューの体質が変わってくるんじゃないの? 「あのヘルツの部分を出してるわけじゃないですか? 波形で出してきたんですけど、見てください。三小節おきぐらいにこうなってて、通常4で組まれるものが、この6と9のところに来てるんですけど、これは打ってるんですか?」ってさ。

O:「ネタにそのまま入ってる音でここにあるからいいんですよ」って。

K:そしたら「俺は知りません」ってさ。

O:だんだん、こっちがわかんなくなってきますね(笑)。


----- それはエンジニアとの会話?

O:そうっす(笑)







----- “PORN GRAF”のKILLER-BONGのラップに関してはどうだった?

O:いやあ、もう、ドンピシャだったっすね。

K:釣りのことを女に女のことを釣りにって言うか。そしたらさ、ただセックスの歌みたいになっちゃったんだ。

O:そうっすね。


----- それで、最終的にタイトルが“PORN GRAF”になった。

O:そうすね。もう。だべりながら。

K:いいビートっていうのはさ、ある意味さ、素直なんだよね。素直に作れば、もう絶対、いいビートになるわけ。

O:だから、ビート初めて作ったやつのビートが、めちゃくちゃやばかったりするの、そこだと思うんです。

K:そう。

O:うぇー、とりあえず、わかんないけど、こうだろ、みたいな。

K:そうそうそう。


----- 初期衝動?

K:初期衝動はもう最高だと思う。やっぱり。二枚目は「最高じゃない」っていうジンクスがあるわけだ。だけど、どうかなあ? 二枚目のほうがもっとおもしろかったりすると思う。もっといろいろ知ってるから。

O:「JAY-Zが一枚目がすべてだ」って言ってたんですけど、自分の人生のキャリアで。

K:始める感じだもんね。それで知れわたるわけだから。

O:それをやった上で、二枚目を出すわけだから、すごい考えてるはずなんですよ。今、自分もそこ、苦戦してるんすけど。


----- ああ。そうなんだ。

O:だから、絶対おもしろくなると思うんすよね。

K:遊んでる人って言うのはさ、何か特別なルール、人生があると思うんだ。確実に年齢制限がない人がいるんだ。オレはそういう人が出す二枚目とか三枚目、四枚目、五枚目っていうのはすごいものだと思うんだ。


----- って考えると、オムスくんが今、乗り越える、乗り越えたい、乗り越えなきゃいけない壁っていうのは、どういうとこにあるの?

O:すげぇシンプルなんですけど。要は、今まで経験したこと以外のことをもっとおもしろく表現できるようになりたいし、あとは、さっき言った初期衝動っていうのがなくならないでいつまでもやりたい。

K:それ、いいよ。オレもだからそうだもん。オレの話になっちゃうけどさ。

O:いや、それ、すごい感じる。

K:オムスの経験率がもーLV30。フランスでライヴをしたりとかジャズの人といっしょにやるっていうのはもうすごいことだと思うよ。


----- 菊地(成孔)さんとの出会いは大きい?

O:ブッ飛んでるし、ほんとにいろいろ経験してきた人だっていうのがわかるんで。それこそ、ほんとに今もまだ経験してる。オレみたいなペーペーに、野音だったりスタジオ・コーストっていう場所で、オレらの客ではない人に見せる機会をくれたっていうこととか、パリにいっしょに行かせてもらったりとか、自分の経験の中でデカい。


----- 今の壁というか、苦戦を乗り越えたいと思う時、技術的な問題と気持ち的な問題って、どれぐらいの割合だったりする?

K:すごいいい質問だねぇ。

O:ふふふ。

K:ほんとそうだね。どっちもほしいよね。

O:どっちもほしいすね。

K:必ず同じレベルでほしいよ。

O:うん。

K:ジャズの方に行って、乗りこなせる人ってあんまりいないよ。気持ちはもう技術を上回るよ。

O:それはそうっすね。

K:技術は、必ず当日もらえるものだからさ。相手がいれば、いるだけで。対戦相手とかによってさ。技術は手に入れたい、まだまだ手に入れられるかもしれないね。


----- ところで、『Mr. "All Bad" Jordan』ははっきりとコンセプトがあったアルバムだったけど、今回の場合はどうだった?

O:オレはカニエの五枚目(『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』)を聴く時まで、アルバム一枚の構成について意識して聴いてなかったんすよね。


----- なるほど。

O:『Mr. "All Bad" Jordan』の時は、ラップでどういうことラップしていいか、まだわかんなかったっていうか。まあ、でもやっぱ、ラップは、オレのことしか歌えないっていうか。正直そこまでラップが好きっていうわけじゃなかったんすよ、あの時は。ラップすることが怖くてしょうがなかったっていうか。


----- えー、そうなの?

O:はい。

K:おお。なんだそれ? 聞きたいよ。

O:だって、要は、自分の意見を述べて、良いだ悪いだ、ああだこうだ言われるっていうのがやっぱり怖いすね。オレは元々ビートから入ってるんです。でも、ラップもやってたわけだから、そこでラップをやらないっていうのは、サムイなと思って。「オレはビートメイカーだから、ビートのアルバムを最初に出します」っていうのは、なんか、オレはかっこわるいと思ったんすよ。


----- そういう葛藤みたいのが、あのアルバムの攻撃性に転化したのかな。

O:舐められたくないっていうか。たぶん、ヤンキーが「なんだ、コノヤロー!」っていうのと似たよーな。

K:つまりNYヤンキースだよな。


----- ラップのアルバムを出すのにかなり勇気がいったんだ。

K:たしかに、おまえさん、やってみたら!

O:はははは。まじでやってほしいっす。そこは二木さんにかかわらず。

K:なんとなくそうだと思う。

O:まじで怖いからやってみ、っていう。でも、やっぱ、ラップ始めた時はちょい自信あったんすけど、どんどん崩れて来るんですよ。

K:ただ上手くなって行く。そう、気分は減って行く。スキルだけが増して行くだけなんだ。他のところに身を投じてみれば、初期衝動なんだ。。すべてがね。もうジャンルが違けりゃ違うほど。







----- じゃあ、ぶっちゃけ、『OMBS』はビートメイカー、OMSBのファースト・アルバム?

O:あああ。


----- それはちょっとオオゲサか?

O:うーーーーん。

K:言い切っちゃおう。俺が。すごい自信があるっていうことでいいんじゃないか。

O:自信はすごいある。

K:二木はわからないだろうけど……


----- また来た。

K:ラッパーがビートを作った時、それってもうずるいじゃないか。

O:ふふふ。


----- 「どうせラッパーのビートだろ」みたいな感じ?

K:そうだよ。


----- なるほど。

K:だってさ、ラップしながらビートを作って出す、欲望が生まれてるやつってのはさ、誰しも叩かれる場所にしかいないっていうことなんじゃないか。

O:はははは。

K:だってズルイんだから。オレたちは二つできるよ。いや、三つできるかもね。四つできるかもしれない。だけど、そのすべてがさ、レベルが低かったらいやだけど。


----- ところで、オムスくんはダンス・ミュージックを作ってる意識はある?

K:あ、来た! その質問、よくされたよ、昔されたなあ、それ。

O:どっちかって言うと、そうですね。首を振るのもいいんですけど。今、それがもうポーズになってる人ってすごく多いと思って。首を振るっていうのがイケてるからやってるって。それは、イケてるからやってるでいいんですけど、「イケてるでしょ?」ってなっちゃ、ダメだと思うんですよ。好きだから、自然に振っちゃうってのが大事で。で、そういう、自分が自然と振るっていうところを無意識でやってるっていうのが、ふと気づく時とかに、これがいいビートだな、と思ったりして。で、そこから体で表現したくなるぐらいに、踊り方なんか何でもいいから、とりあえず体が動く音楽を作れればっていうのは思いますね。

K:それはもうネクストレベルだと思うよ。人が呼吸するのと同じぐらいのリディムなんだね。それがダンス・ミュージックなんじゃないか? それを知らないんだったら、もうすべてが終わってしまうかもしれない。変態みたいになっちまうかもしれない。

O:うん。

K:オレもかつて、そう思ってたんだね。


----- 踊らせたくないって思ってた?

K:そう思ってた。DJをやるようになったら、それはまったくつまらない。オレが踊らないのに、人が踊るわけないんだ。それを知らないのって、もう悲しいことだなって気がついた。それをすごい早く知ってるってのは、もう、すごいことだと思うよ。わかんない。オレが遅過ぎたのかもしれない。だけど、それをそんなふうに早く知ってるんだったらすごい楽しみだな。


----- OMSBオリジナルのダンスが出てくるかもしれない。

K:それなら最高だよ。それがジャンルなんだよ。それがある意味のジャンル。OLIVEOILとか、OLIVE OILでしか踊れないんだよ。オムスビのビートでしか踊れなくたって、それはダンス・ミュージックだ。踊れるんだしさ。実に生活に合ったリディムだったりするんだね。無理してない。

O:そうなったら、うれしいすね。ほんとに。

K:名前、付けたらいいんじゃないの。

O:オムステップ。

K:オム・ステップ・ジャズ。三つぐらい混ざってると思うんだ。


----- ははは。そろそろ最後の質問なんですけど、オムスくんにとっての理想の音楽とは?

O:ここまで、たぶん、話の端々にずっと出てたと思うんすけど。

K:ふふっ。マジで?

O:自分が予期しないで、これがオレのベストだってなるような曲をどんどん作れるようになりたいっすね。

K:いい。

O:要は、初期衝動じゃないけど、頭の中に、たとえば、ずっとこういうビート作りたいっていう理想があるじゃないですか。で、それを作るんじゃなくて、その先でも横でもなんでもいいんすけど、まったく別物になっててもいいんすけど、そういうものができ続けるのが一番の理想ですね。


----- じゃあ、逆に具体的にイメージを持ちたくないんだ。30、40歳の頃になったら、こういう音楽をやっていたい、みたいな。

O:だけど、菊地さんとだったり、いろんなセッションがあって、自分の音楽が他のジャンルの言葉でなんとかかんとかって言われてるけど、ヒップホップじゃなきゃ意味がないんで。

K:レペゼンだ。オレの気持ちといっしょだ。

O:だから、ヒップホップ以外のたとえられ方をされんのは嫌だから。

K:レペゼン目指したいライヴっていうのもいろいろあってね。泣いてもらってもいいし、モッシュが起きてもいい。そういう方が百万倍うれしいよ。それがもう、ほんとにうれしいね。感情みたいのが出てるのが。

O:何より自分が泣きたいかもしれないっすね。ライヴ観て泣くより自分がライヴ終わって泣きたい。

K:そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう

O:まだ一回しかないんですけど。いや、二回だ。この前のEL NINOの時、ちょっと外出て泣いた。


----- そうなんだ!?

O:そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう。




----- 2014年10月24日(金) 都内某所にて(立会人/文/構成:二木信)-----